Vol.5 <AI月次監査>
「数値は付けるから使うへ~AI月次監査機能の登場~」
2018年5月21日に、freeeはAI月次監査という機能を公表しました。
当面はアドバイザーの皆様限定の機能として、試算表の確認・修正作業をAIが支援する仕組みです(詳細は次回の連載でも取り上げる予定です)。
私は、大学卒業後にあずさ監査法人の大阪事務所でキャリアをスタートしました。
監査法人では企業の上場支援や財務デューデリジェンスもしましたが、圧倒的にメインの仕事は上場企業の「会計監査」でした。
「監査」の仕事は決算・申告の精度を担保する最後の砦です。その本質的価値は信頼・安心の付与であり、保険的な性質をもっていると考えています。
そんな監査をAIの力を借りてよりスムーズに、そして精度高くしていく。今般のリリースは第一弾ではありますが、私が夢見ていた機能の一つです。
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税理士は言うまでもなく、「納税義務の適正な実現」が使命であり、その実現のために税務業務とその前提となる財務書類の作成、記帳代行等を行うことが本業です(税理士法第一条、第二条)。
近年のIT技術の発展は、その実現手段に大きな変革をもたらしています。そのキーワードが「自動化」です。
古くは専用機やパッケージ型ソフトが決算集計や申告書の集計作業を自動化。
そして、過去数年間で進んだのはクラウド会計による、情報収集の電子化・記帳の自動化です。
インターネットバンキングやクレジットカードのデータをインターネット上で集め、自動で日付・金額・取引先を転記し、さらに勘定科目を付けることまでします。
直近ではOCR技術の発展で、紙ベースの通帳や領収書も低コストで電子化することが出来るようになりました。電子化できれば、自動的に記帳できます。
そして、いよいよ自動化の対象が「帳簿チェック」にまで広がってきました。これは単純な自動化領域の拡大ではありません。
情報収集→記帳→確認→決算→申告の一連の業務が自動化の対象になります。一連が自動化されると、会計事務所様の業務効率と精度(正確性)が圧倒的に上がります。
・月次監査の精度を上げられるので、より記帳の自動化範囲を広げられる
・自動チェック機能の活用で、職員様の習熟が加速度的に上がる
・一連の業務が自動化すると、所長様・職員様全員の効率が上がる
2018年5月21日、freeeは「AI月次監査」の第一弾として2つの機能をリリースしました。
① 特定のルールに基づいて該当取引にアラートを上げる
②修正した仕訳に類似する仕訳を提示する
1.クラウド会計freeeの、「試算表」「月次推移表」の画面でチェックにかかった項目がハイライトされている
◯10万円以上の消耗品費についての固定資産計上アラート
◯受取利息の源泉税が入っていない仕訳のアラート
2.対象の数値をクリックすると、元帳が開かれ、チェックにかかった仕訳がハイライトされている
◯10万円以上の消耗品費についての固定資産計上アラート(仕訳もハイライト)
◯受取利息の源泉税が入っていない仕訳のアラート(仕訳もハイライト)
3.そのまま修正することができる (2018年7月実装予定)
4.仕訳修正すると、AIが判定した類似仕訳が推薦される
(1-3とは無関係に修正した仕訳に関しても推薦)
※開発中の画面のため、公開時と異なる場合がございます
さらに近い将来、月次監査作業はあたかもスクリーン上でAIと対話するような形で進む世界になっていくと考えています。
そして、2018年中には月次監査での自動チェック項目を事務所様ごとにカスタマイズできる機能を実装すべく、開発を進めております。
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情報収集→記帳→確認→決算→申告の一連の会計・税務業務が自動化されていく=仕事がなくなる、という危機感を持たれている事務所様は多いと思います。
私は、税理士の「納税義務の適正な実現」という使命は変わらないですし、制度が大きく変わることはないと考えています。
一方で、「帳簿を付ける、数字を付ける」という仕事はなくなっていくでしょう。現に多くの事務所様ではその時代がくると考えておられます。
そのような時代に必要なのは、「数字を使う」というスタンスだと考えています。数字を使ってスモールビジネスの経営者に向き合う、それは会計業界のもう一つの使命だと考えています。自動化されリアルタイムに正しい数字が集計されるということは、使える数字が増える、ということです。
一歩一歩、技術を活用しながら「数字を使う」、そういう仕事を事務所様の中で増やしてみてはいかがでしょうか?