第7回では「オンラインマーケティング(とそれに付随する営業)」第8回では「カスタマーサクセス」を焦点にコラムを書いてまいりました。

今回は企業活動を支える人材についてfreeeの考え方や施策をご紹介させていただきます。 人手不足が叫ばれて久しい世の中において、何かしら人材の採用/研修/リテンションの参考になればと考えています。

◇◇◇


そもそも世の中は本当に人手不足なのでしょうか?
以下の図表は有効求人倍率の経年変化です。これを見るとたしかに2010年以降に有効求人倍率は急上昇し、バブル期をもしのぐ1.5倍(2017年)まで上昇しています。


(出典: 独立行政法人労働政策研究・研修機構

では会計業界においてはどうなのでしょうか?
2018年8月における「会計事務の職」の有効求人倍率は以下の通りとなっています。

常用社員 0.73倍
常用的パートタイム 1.11倍
常用社員+パートタイム 0.81倍

       (出典: e-Stat)



これは一般的な事務職よりも遥かに高い数値となっており、特にパートタイム社員については完全な売り手市場と言って差し支えない水準です。

加えて、統計数値としては1倍を下回っていますが人材確保の実態は遥かに厳しいとも聞いています。とある人材紹介の会社様にお伺いしたところ、各社が金銭面での待遇、オフィス環境改善、労働時間などを競い、全体としての職場の魅力への投資が採用の必須条件になりつつあるとのことです。

◇◇◇


人材確保に悩んでいるのはfreeeも全く同様です。freeeはそもそも浮き沈みの激しいベンチャー企業であり、決して多くの人に馴染み深いサービスではないB2Bサービスを手がけています。

そこでfreeeが大切にしているのは「ミッション(会社の存在意義)」と「カルチャー」です。


ミッションについて

ミッションは会社の存在意義/「なにをやるか」を定義づけています。社員の立場からすると「これを実現するために私達はfreeeにいるんだ」という動機づけになります。



freeeは従来、「スモールビジネスに携わるすべての人が創造的な活動にフォーカスできるよう」というミッションを掲げてきました。

最初のプロダクト発表から5年経過し、freeeの提供価値はバックオフィスの業務効率化にとどまらず、企業経営に必要な数値の可視化を通して収益性の向上にも貢献できるようになってきています。
つまり、freeeを使えば「時間創出だけでなく収益も創出する」という事例が生まれてきています。
このような外部要因も踏まえて、改めて我々は「なにをやるのか」を言語化し直しました。

カルチャーについて

ミッションが「なにをやるか」に対して、カルチャーは「だれとやるか」「どうやるか」 「人」と「人と人との関係性」を規定しています。

より具体的には人の特性と行動指針という形でそれぞれ7つと5つのキーワードにまとめています。



実は、freeeでは従来行動指針のみ持っていました。MTGでは「そのアイデアはマジ価値だよね」「アウトプット→思考、でやってみたら」という会話が頻出し、全社員が強く意識してきました。

ところが、会社の規模が拡大するにつれて、freeeの中で大きなインパクトを残し成長していく社員には共通の特性があることが見えてきました。それを言語化することで、より多くの社員がfreeeで活躍し、成長していけるのではないかと考えて2018年7月に約半年の議論を経て社内公開しました。

カルチャーの各項目で重要なのはキーフレーズではなく説明文です。特に最も重視しているドリームチームやアソビゴコロは特にfreeeならではの意味付けを行っています。

ここではそれぞれの項目の詳細は省略いたします(興味ある方は是非freeeの担当者までお問い合わせください!)が、カルチャー浸透/進化の仕組みや仕掛けを山程つくり、freeeの人間全員でfreeeという会社のカルチャーを作っています。

具体的には

  • 社内にカルチャー推進チーム(通称: カル推)という部署があり、そのチームがカルチャーに責任を持つ
  • カルチャー推進week: 昼食を取りながらカルチャーの各項目を議論するイベントを実施
  • 全社合宿(オフサイト)で第6の価値基準を全社員で議論する
  • カルチャーポスターを作成し、トイレなど目につく場所にはる
  • 支社の人間が好きな言葉を語るポスターを作り、本社にはる


など

まだまだ十分だとは思っていませんが、ここまで投資して「自分たちが自分たちの会社を作っていく」という感覚を共有し、求心力にしています。

◇◇◇


他業界にも増して、士業業界は人材が全ての業界です。各社それぞれに工夫を凝らされているとは思いますが、一番の資産に対する投資が十分か?というとまだまだ、という事務所様は多いのではないでしょうか?

昨今の人手不足は労働人口の減少というマクロトレンドを受けた長期性のものと予測されます。この逆風を好機と捉えて改めて一番の資産である「人材」に目を向けられてはいかがでしょうか?


※バックナンバーはこちら