Vol.6 士業事務所にビジネスモデルが求められる時代
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そもそも「士業」とは独占業務を持つがゆえに、従来ビジネスモデルを意識することもなく、事務所を経営してくることが可能でした。
しかしそのような時代は、国内市場の急速な収縮と自動化ツールの登場により、終わりを迎えました。その結果として、多くの方が感じられているように、競争の時代となりました。
競争の時代とは「人並みのサービスを提供すれば報われる」という世界ではありません。
独占業務であるがゆえに、人並みのサービス提供そのものが難しいのですが、それを提供しているだけでは、極端な話食べていくのも難しい、そんな大変な世界です。
そんな世界において、事務所様が「やりたいこと」をしつつ、適切な利潤を上げる、そんな環境を具体的なイメージにしていく作業がビジネスモデルの構築です。
【ビジネスモデルとは何か】
私は士業を経営される方にとって、ビジネスモデルには大きく6つの要素があると考えています。
① ターゲット顧客
・どのような顧問先様を主力顧客にするのか、決める
・規模/業種/行動パターン、様々な軸で具体的な顧問先像を描く
古くからfreeeシリーズをご利用頂いている会計事務所様の中には「freeeの利用に賛同頂ける方のみ顧問先にしている」という方もいらっしゃいます。
これは、事務所業務の負担を減らすだけでなく、業種や成長意欲などでも一定の特性に収斂される可能性のある手法だと感じます。
ターゲット顧客を決めることは、②以下の基礎になります。
② 提供価値
・①で定めたターゲット顧客に対して、提供する価値を決める
・「租税サービス」「適切な経営支援」という抽象的な価値よりも、顧問先様の視点(顧問先様の課題解決の視点)、そして自事務所の強みから具体的に決める
自事務所の強み、というのは難しいかもしれません。
ただ、興味のあること/これまで蓄積してきた知見をより尖らせていく、と考えればとっかかりになるかと思います。
もちろん、いわゆるコンサルティングのようなサービスだけでなく記帳代行や経理代行を徹底的にローコストに提供する、という方向もありえます。
③ 収益モデル
・顧問先数と単価から、収益計画を作る
・従来型の顧問料収入以外にも収益源を作れないか考える
収益モデルは①②と密接に関係します。
②の提供価値に自信があれば、堂々とした対価をいただくことは、職員様によりチャレンジの機会とよい生活を提供する上で必須だと考えています。
長く続いたデフレ経済の影響からか、提供価値に比べ弱気の価格設計をする事例が目立ちます。
④ 顧客獲得チャネル
・同業者/金融機関/顧問先様からの紹介は立派な顧客獲得チャネル
・それ以外に①ターゲット顧客が多く集まる場へのリーチを持つ方法を作る
チャネルで大切なことは、①ターゲットに適したチャネルを見出すことと、そのチャネルから顧問先様が流入するような具体的な仕掛けを作ること、行動をとることだと考えらます。
freeeはその生い立ちから「オンラインマーケティング」が得意です。
このオンラインマーケティングのノウハウを活かし、今後税理士検索freeeがより会計事務所様の顧客獲得チャネルとして役立てるように進化させることを計画しています。
⑤ コスト/投資モデル
・顧問先様の経営計画策定と同様、事務所のコストを数値として明確化する
・従来サービスの継続提供だけでなく、②提供価値の強化④チャネル開拓の投資を織り込む
多くの事務所様に訪問させて頂く中で、最近会計業界で進んでいるのはオフィスへの投資だと感じています。
優秀な人材の確保には確かに一つ重要な要素であると考えます。
⑥ 価値提供の体制
・1人の先生が全ての価値を提供することが難しい時代
・職員様との役割分担だけでなく、②提供価値を全うするために必要なツールや提携パートナーを作っておく
【新たなビジネスモデル構築に向けて】
ここまでご覧いただいて、ビジネスモデルと偉そうに横文字使っても、それは当たり前のことを言っている、と感じられた方が多いかもしれません。
では、なぜその当たり前のことの重要性が増しているのか?
ひとつには世の中の変化が激しくなっているからです。その時代の波を乗り越えていくには一度立ち止まって、将来の姿を明確に持っておくことが重要になります。
そして、一度方針を決めたら「職員様に共有して理解を得る」「そして試してみる」ことが重要です。
参考までですが、freeeでは「あえて共有」「アウトプット→思考」というのを重要な価値基準(行動規範)として定めています。
柔軟に時代の変化に対応し競争の時代を勝ち残り、そして顧問先様に今まで以上の価値を提供できる、その第一歩としてビジネスモデル構築/見直しはきっと役に立つことだと考えています。
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