2018年3月から9回に渡って、連載をしてまいりました『凡事徹底』ですがいよいよ最終回である10回を迎えました。
最終回は「fintechが会計業界に与える影響」をfreeeがどう考えているか、についてまとめたいと考えています。

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fintech(フィンテック)のtechはテクノロジーを指します。
ご承知の通り、テクノロジーは様々な分野で自動化をもたらしています。自動運転もそうですし、金融の分野では与信審査をAIが実施する、というような自動化もあります。

会計業界でもクラウド会計から始まり、最近ではどの会計ソフトでも「自動仕訳」が標準的に搭載されています。
freeeでは自動仕訳の精度が継続的に向上するような機械学習も組み込んでいるので、技術の進展や仕訳データの蓄積と伴に、自動仕訳の精度はどんどん向上していきます。

例えば10年後、車の運転を機械が行っている時代を想像したときに、モニタの前に向かって領収書や伝票を入力している姿は正直想像しづらいと思います。

だとすると、業務の自動化領域は今後も拡大していきます。自動化された業務は「コモディティ・サービス」だとユーザーからみなされる傾向は強くなるだろうと予想されます。

多くのプレイヤーが同じサービスを提供できる(と多くの顧客が考える)コモディティサービスの中で自社が選ばれるには、顧客が自然とそのサービスを見つけてストレスなく利用し続けられる「顧客体験の設計」と「低コスト」の実現が肝だと考えています。
つまり顧問先との証憑のやりとり、月次監査のあり方まで含めて顧問先に負荷をかけないサービスを、しかも低コストで提供することが求められます。



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ではテクノロジーは全てを自動化するのか?会計業界を破壊するのか?というとfreeeではNOだと考えています。



会計業界独自の強みは、「数字にアクセスできる」「社長室に入れる」「信頼されている」の3つだと考えこれらのうち後ろ2つはテクノロジー(特にAI)が弱いとされる分野です。

社長室での会話がこれまで以上に以上に経営者に評価される、とも言えるかもしれません。
ということは会計・税務のみならずマーケティング、営業、IT、オペレーションのように話題を広げるかことも重要かもしれませんし、相性のいい顧問先に絞っていくことになるかもしれません。

いずれにせよ、事務所様ごとの強みをより明確にする必要はあるでしょう。

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結果として、会計業界では多様な人材確保への投資がより必要になったり、規模の経済がききやすくなったりするでしょう。
そのため、足元でも進んでいると実感していますが、大規模事務所様が益々大きくなっています。

一方で、特徴的なサービスを提供する個人事務所様も益々輝くのではないでしょうか。
ニッチ業界での全国ナンバー1、IT導入支援、遠隔地・僻地へのサービス提供など、テクノロジーを活用すればこれまで個人事業主ではできなかった生き方もできるようになっています。

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これまで10回でfreeeのミッション/経営方針、最近のリリース、会計業界のビジネスモデルを取り上げてまいりました。が、この間にも会計業界や弊社の提供サービスは刻々と変わっていると実感する事例も多々ありました。

そして私自身も2018年10月からfreeeの金融事業の担当に変わり、今はfintechのサービス作りに勤しんでいます。

この連載が少しでも変化への「きっかけ」「気づき」になれば、と願っております。

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